2016年4月26日 朝日新聞デジタル

「安保法は憲法違反」提訴
東京・いわき市民計700人


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安保法制を違憲として提訴のため東京地裁に入る原告団ら=26日午後1時57分、東京・霞が関、林紗記撮影
 集団的自衛権の行使を認めた安全保障関連法は憲法違反だとして、市民約500人が26日、同法による自衛隊の出動の差し止めなどを国に求める訴訟を東京地裁に起こした。「平和的生存権を侵害され、精神的苦痛を受けた」として1人あたり10万円の慰謝料も求めている。

 訴えたのは全国に住む原爆や空襲の被害者、基地周辺住民、自衛隊員の家族、憲法学者など。代理人弁護士らでつくる「安保法制違憲訴訟の会」によると、夏ごろまでにさらに約1500人が、全国の約15地裁で同様の訴訟を起こすという。

 訴状では、「安保法は憲法9条に反する」としたうえで、「日本が戦争当事国となる危険性が高まり、武力攻撃やテロ攻撃を招く」と主張。具体的な損害として、戦争体験者は「平和主義を否定される精神的苦痛」、基地周辺の住民は「攻撃対象となる危険への恐怖」などを挙げた。

 会見した違憲訴訟の会共同代表の堀野紀弁護士は「三権分立の一角として、裁判所には国会の暴走をチェックする義務がある」と述べた。

 この日はまた、福島県いわき市の市民ら204人も、安保法制が憲法違反だとして国に1人あたり1万円の慰謝料を求める集団訴訟を、福島地裁いわき支部に起こした。

 内閣官房国家安全保障局は「訴状を見た上で関係省庁と対応を検討する。法制は憲法に合致し、国民の命と平和な暮らしを守るのに必要不可欠なものだ」との談話を出した。(千葉雄高、根岸拓朗)

■「平和的生存権の侵害」立証は高いハードル

 「法律が違憲だ」とする訴訟は高いハードルがある。最高裁が1952年に、具体的な権利侵害がなければ憲法判断はできない、とする判断を示しているからだ。

 安全保障関連法の成立後、違憲だと主張した訴訟はすでに東京地裁などで起こされたが、具体的な権利侵害の主張がなく不適法だとして「門前払い」されてきた。最高裁で敗訴が確定した訴訟もある。

 「門前払い」を避けるために、東京地裁で26日に提訴した原告は「平和的生存権」が侵害されたと主張。戦争体験者が「戦争の悪夢を呼び起こされる」と訴えるなど、原告が個別に具体的な損害を挙げた。ただ、2003年の自衛隊のイラク派遣をめぐり、派遣差し止めなどを求めた訴訟の判決で、平和的生存権に基づく主張を「具体的ではない」と退けた例もある。

 今回の訴訟代理人の福田護弁護士は「イラク派遣よりも集団的自衛権の行使の方が、直接戦争に結びつき、具体的な権利侵害のおそれが明確だ」と述べ、違いを強調した。


安保法制を違憲として提訴した後、会見する弁護士ら

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会見する寺井一弘弁護士(中央)ら共同代表=26日午後3時1分、東京・霞が関、越田省吾撮影会見する堀野紀弁護士(左端)ら共同代表=26日午後3時28分、東京・霞が関、越田省吾撮影
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会見に臨む原告の堀尾輝久・東大名誉教授(中央)ら=26日午後3時54分、東京・霞が関、林紗記撮影会見する杉浦ひとみ弁護士(右から2人目)ら共同代表=26日午後3時36分、東京・霞が関、越田省吾撮影
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会見で訴状を手にする弁護団ら=26日午後3時3分、東京・霞が関、林紗記撮影

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参考

安保法制違憲訴訟の会
 http://anpoiken.jp/

2016年4月26日、東京地方裁判所へ提訴しました。

訴状全文

自衛隊出動差止め等請求事件・訴状
国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求事件・訴状

2016年4月20日「4.20安保法制違憲訴訟決起集会」