2016年6月2日 朝日新聞デジタル

熊本地震

未知の断層か、軟弱地盤か
阿蘇市で陥没


 熊本県などでの一連の地震で、熊本県阿蘇市では、約7キロにわたり地面が陥没した場所が数カ所、直線状に確認された。未知の断層か、カルデラ内特有の火山灰による軟弱な地盤のためか――。研究者の間で評価が分かれている。

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阿蘇市で陥没が確認された地点
 東京電機大の安田進教授(地震・地盤工学)の調査では、4月16日未明のマグニチュード(M)7・3の本震により、地面が0・5〜1・5メートル陥没した場所が、阿蘇市西部で少なくとも7カ所あった。うち6カ所はほぼ直線の上に存在していた。大きな揺れを引き起こした布田川断層の「右横ずれ」ではなく地面が垂直方向に落ち込み、田畑や道路、宅地に被害が出た。

 なぜ起きたのか。5月下旬に千葉市で開かれた日本地球惑星科学連合の大会でも、複数の研究者がこの陥没を取り上げた。大別すると、一連の地震で元々あった未知の断層が表れたという見解と、地震の揺れで液状化現象などが起き、地盤が落ち込んだのではないかという見解に分かれ、議論が交わされた。

 広島大の中田高(たかし)名誉教授(地形学)は部分的に断層が存在する可能性が高いとみる。「連続的ではないが、溝状の地盤破壊が直線上に存在している。(引っ張られる力で地盤がずり下がる)正断層による陥没では」

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大きく陥没した土地=5月9日、熊本県阿蘇市狩尾
 熊本県が以前行った調査などにより、陥没した1カ所から約300メートル離れた小野原遺跡で正断層が確認されていることも、この見方を後押しする。約2千年前にM6・8程度の地震があったと推測されている。

 一方、東京大生産技術研究所の清田隆准教授(地盤工学)は、カルデラ内に表層から深さ数十メートルまで火山灰層に覆われた地点があることに注目し、「断層の存在も否定できないが、より地盤のゆるい地域が陥没したのではないか」。かつて川があった場所は、さらに地盤が緩くなるという。

 安田教授は「表層地盤の軟らかさ、固い地盤がどれほどの深さにあるのかなどを、ボーリング調査や人工地震を利用した地下構造の探査などで定量的に調べる必要がある」と指摘する。

(後藤一也、今直也)
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